現代でも使用されるラテン語の表現

現代のヨーロッパ言語においては、いわば恰好をつけるために、現代でもラテン語の表現を好んで使用する傾向があります。このような表現を知らないと、欧文を読むときに困りますし、知っていると、現代ヨーロッパ言語で話したり書いたりする場合に、知的さをアピールすることができます。

以下では、そのような表現のうち、一般的に用いられるものをまとめておきます。専門的な用語については、当ウェブサイトの他の項をご覧下さい。

anno
~年に。「anno 2004」(2004年に)などと使う。annus(年)の奪格(ablativus temporis:時の奪格)。
ergo
ゆえに。デカルトの「cogito ergo sum」(我思う、ゆえに、我在り)で有名な「ergo」である。
et al.
~及び他の人。書物の著者や編者が複数の場合に、そのうちの一人ないし数名のみを掲げて、あとは省略する場合に使用する。厳密に言うと、省略される人が男性単数なら「et alius」、女性単数なら「et alia」、男性複数なら「et alii」、女性複数なら「et aliae」である。
et cetera (etc.)
等々。直訳すると、「~及びその他のもの」。英語風に「エトセトラ」とよく読まれるが、ラテン語としては「エト・ケーテラ」。
exempli gratia (e.g.)
例えば。gratiaは奪格であるが、ここでは属格をとる後置詞的に使用される用法で、「~のために」という意味である。したがって、直訳的には「模範とするため」くらいの意味である。
ibidem (ibid.)
同所で。論文において出典の示す場合に、直前の出典と文献も頁数も同一である場合に、重複を避けるためにこのように記される。
idem (id.)
同じもの。論文において出典を示す場合に、当該出典が直前の出典と文献を同じくする場合に、文献名を省略し、頁数を示す場合に用いられる。
id est (i.e.)
すなわち。直訳すると「それは~」。ドイツ語の「das ist (heißt)」や英語の「that is」と発想は同じ。
in absentia
不在中に。
in abstracto
抽象的には。理論上は。
in concreto
具体的には。個別事案においては。
in corpore
一体となって。皆一緒に。
in effectu
実際に。
in effigie
比喩的に。
in facto
実際に。
in memoriam
(~を)記念して。
in natura
本当は。現物で。
in nuce
要するに。端的にいえば。
in perpetuum
永久に。
in praxi
実際には。実務的には。
in puncto
~の点では。~に関しては。
in statu quo
現状においては。
in statu quo ante
以前の状態においては。
in summa
全体として。まとめると。
inter alia
就中(なかんずく)。interは対格支配の前置詞で、aliaは「alius, alia, aliud」の中性複数対格。ドイツ語の「unter anderen (u.a.)」と発想は同じで、「他のもののなかでも就中」ということ。
in vino veritas
ワインの中に真実あり(酒の席で本音が出る)。
quod erat demonstrandum (Q.E.D.)
以上のことは証明されたとすべきである。数学の証明の最後に付する。quodは関係代名詞であり、それまでのすべてを承けるということであろう。
status quo
現状。
status quo ante
以前の状態。
versus (v., vs.)
ラテン語では「~に向かって」という意味の後置詞で、「in Galliam versus」(ガリアに向かって)のように使われていたが、現代英語では「~に対して」という前置詞として使用されている。
vice versa
逆もまた真なり。